LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
過去の翻訳はこちらからどうぞ!
253話 代理人
ナビエはエインジェルのリボンを凍らせて見せた。
そして皆の前で「私が彼のリボンを凍らせました。魔法使いは作ることができるのです」と告げた。
エインジェルもそのリボンのごとく、固まっていた。表情が凍りついていた。
「魔法使いを作れるだと…?」
人々は魔力減少現象ではなく『彼らは魔法使いを作ることができる』という事実に興奮している様子だった。
しかし、ナビエの言葉に首をかしげているエインジェル。ある意味凄い人間だ。
それよりも、ハインリの仕事はまだだろうか…。まだ自分が視線を集めないといけないのか?あまり会話を長びかせると不審がられるので、なんとか早くして欲しいところだった。
しかもエインジェルは想像だにしないことをする人間だ。突然彼の対象の矛先を変えるかもしれない。なので、エインジェルより今は自分に注目が集まっているとはいえ、まだ不安が残っていた。
*
次の瞬間、エインジェルは突然笑顔になった。これにはナビエも何を言うつもりなのか?とドキドキする。
しかし、彼が口を開こうとしたその瞬間、突然大きな音がした。
その音にエインジェルも振り返る。誰かの叫び声も聞こえた。
*
音は例の騎士の傍から聞こえたものだった。
なんと、檻の中に閉じ込められていた騎士が、鉄槍を貫いてなんと出てきたのだ。騎士は背中から突然鉄槍を3つだして、床を突き刺したのだった。
ナビエは思わずハインリを見そうになったが、すぐに思いとどまって檻から出て逃げ去った騎士の後ろ姿だけ見つめた。
そのまま出口に向かって突進した騎士を多国籍軍の第四騎士団が一歩遅れて追いかけた。
しかし、人が群がり、後ろに立った人々は前で起こっていることを見ようと前方に押し寄せ、第四騎士団の騎士たちが群衆を避けて追いかけることが思うようにできない状況だった。
そして、ナビエたちが入ってきたホールのドアは開いたままであったので、騎士はその扉から出て立ち去った。
*
微動だにしなかったエインジェルは短くため息をついた。ナビエと目が合うと、彼は再びため息をついて質問を投げかけてきた。
「どこまで準備されていたのですか?」
「今回の事、全て予想済みです。」
もちろん、嘘だが。
***
そして新年祭は喧噪の中で終わった。
このような雰囲気で、パーティーダンスに集中できる人はかなり少数派だった。大半の人は頃合いを見てホールの外に出ていった。おそらく自分の国の人々と集まって、急いで今の情報をどのように対処するかについて話し合おうということだろう。
中にはナビエとハインリに話しかけきた王族もいた。それはかなりありがたい事だった。ホールから出ると、自分たちと会話している人がいた方が良かったからだ。
***
人々と話を終えた後、ナビエとハインリも急いで荷物をまとめた。
そしてナビエはハインリに問いかける。
「閉じ込められた騎士は無事に戻りましたか?あなたがしたことですか?」
「はい。熱気で鉄槍を6本溶かしました。足で蹴るとその部分が壊れるように。その後は分かりませんが…おそらく大丈夫でしょう。」
ハインリが外を見た。きっと鳥の姿になって飛んで行っただろう、ということなんだろうとナビエは思った。
あなたは”熱”の魔法も使えるのですか?とナビエが聞くと、ハインリはうなずいた。
そしてナビエの目の前で手のひらを広げて見せたが、見た目からは何も分からなかった。
ハインリが言うには、その能力はかなり加熱に時間が必要なのだそうだ。
それで時間稼ぎが必要だったのか、とナビエは納得した。ハインリは「むしろ火が使えたらよかったのに」と笑いながら悔しがった。
ナビエは彼の手を掴んだ。軽く触れただけでも、彼の手が熱いことが感じられた。
「暖かいです」
そう囁くと、ハインリはナビエの手をしっかりと握った。しかし、ナビエが突然笑うと今度は困惑して聞いた。
「クイーン、なぜ笑うのですか…?」
ナビエは「あなたらしいからです。火を操る能力ではなく熱気を操る能力であることが。」と答えた。
ハインリは、見た目は火のような人ではない。しかし実際にはすごい熱気がある人だ。体の中に熱く込み上げるものがある人だ。それが表面的には見えるタイプではない。
ハインリは理解ができたのか、できていないのか、耳まで赤くしていた。
ナビエはそれをハインリがどうとらえたのか分からず困惑した。感動するだけのの言葉のつもりだったが…。
しかしすぐに彼の反応の意味を悟った。感動したのは彼の心ではなく下半身だということ。
「ハインリ。そういう意味ではありません。」
*****
新年祭に出席した王族たちは、長い間国を空けておくことができないという大義名分で早々に帰路に就いた。
半分は本当だろうが、半分は違う。西大帝国が『魔法使いになることができる』という情報を伝えたことが彼らに大きな影響を及ぼし、国内の情報整理を急ぎたいという、そのためでもあった。
勿論ナビエとハインリもすぐに連合本部を立つことにした。エインジェルは浮かない表情で見送りをした。
彼は「近いうちにお会いできるのを楽しみにしています。ナビエ皇后陛下。」と告げた。
ナビエは、紫色はあなたに似合っていませんでした。別の色を探してみてくださいと返し、その場を立ち去った。
***
ハインリとナビエは馬車に乗り込んだ。
しかしハインリはナビエが馬車のドアを閉めると、すぐに無表情で反対側の窓から外を見ている。
ハインリは未だにエインジェルへの嫉妬心に駆られているのだろうか?ナビエには彼の態度が理解できなかった。
*
彼は口を真一文字に結んでいた。考え込んでいる様子だが、その表情もとても綺麗だとナビエは思えた。
ナビエは思わず彼の顔に手を伸ばした。そして顔に触れ、彼の唇に優しくなぞると、その手の上に自分の両手を重ねた。
そしてナビエの手を包んだ後、ナビエの顔を包み込んで軽く口づけをした。
ハインリは手に口を付ける時、いつも視線がナビエに向くが、今回もそうだった。恥ずかしい気持ちもあったが、熱を帯びた目がナビエの心を惹きつけた。
***
馬車が国境を過ぎたころ、ナビエとハインリは東大帝国に話をした内容について会話をしていた。
ナビエは、ハインリがいないとき東大帝国に連合から一緒に脱退しようと提案をした事を伝えた。ハインリはナビエの手を握りながら、びっくりした顔で目を白黒させた。
そして「そんなに色々なことがあったのですか?」と聞く。
「色々なことがありました。あなたがどれくらい不在だったか、分かりますか?」
ナビエが自分を叱責したと思ったのか、ハインリはシュン…となった。
でもナビエはそれでよいと思った。これからはもっと注意して行動して欲しいからだった。
そしてハインリはナビエに答えは聞いたか?と聞いたが、ナビエは「まだ答えを聞いていませんでしたが、おそらく受け入れられるでしょう。」と答えたのだった。
*****
馬車は西大帝国の首都に入ってからしばらくして宮殿に到着した。
ナビエは、ソビエシュはどう手紙を送り返すのか考えあぐねていた。再度送るほうが良いのか、それとももう少し待つ方がいいのか。今の手紙を送るのは急いでいる様子に見えるのではないかなど悩みながら、執務室に向かった。
すると宰相が廊下を早歩きして呼びかけてきた。
「皇后陛下!」
そして、ナビエの隣に立ったハインリを見てびっくりし、固まっていた。
「皇帝陛下…!」
再び歩き始めた宰相は、ナビエとハインリを交互に見た。
新年祭に出席しに行ったはずが、突然ハインリを連れて帰ってきたことに驚いた様子だった。
宰相は落ち着きを取り戻すとハインリの健康状態が大丈夫か気にかけていた。
「皇帝陛下、なぜこんなに離れられていたのですか?」
その答えの前に、彼が持っている封筒がナビエの目に留まった。東大帝国からの手紙かもしれないと思って聞くと、まさにそうだった。
内容を見てください、と宰相はナビエに封筒を渡した。
内密なものであるので、ナビエはハインリを連れて彼の執務室に行くことにした。宰相とマッケナもすぐに後ろについてきた。
*
執務室に入り封筒を見ると、すでに蜜蝋をはがした痕跡があった。どうやら宰相が内容を確認したようだ。
なぜあえて読んだものを、直接読めと渡すのか?余計に気になった。
ナビエは急いで読み終えて、宰相がなぜ手紙を直接読ませたのか理解した。
一緒に手紙を読んでいたハインリも、ほぼ同時に顔を見合わせた。
*
ナビエとハインリは執務室から出るとすぐにナビエの母の元に向かった。
しかし、彼女は部屋にいなかった。ラリとカイを見ているかもしれないと思い、急いで向かうと確かに母はそこにいた。ラリとカイをゆりかごに寝かせて、その様子を見守りながら、座って絵本を読んでいた。
「お母さま」
ナビエが近づくと、母親は絵本を置いて帰ってきたナビエを暖かく迎えた。一度軽く抱擁をして、ナビエの後ろに立ったハインリに気づき、挨拶をした。
「久しぶりです。陛下」
ナビエの母はハインリが拉致されていた事実を知らないため、赤ちゃんとナビエを残して一人で長い間外出をしていたハインリに少し怪訝な顔をしてるようにも見えた。
ハインリも今日はぎこちなく母と挨拶を交わした。
*
次第に二人が和やかな雰囲気になると、彼は双子にかけ寄った。
「ウアン!」
「ウアン!」
驚くべきことに、ハインリが近づくと、ラリとカイは同時に泣いた。
ハインリは泣いている赤ちゃんたちを交互に抱きしめた。
ナビエが近づいて揺りかごに横たわっているカイを見てみると、ハインリはラリを抱きしめ、頬ずりをした。彼の目には涙が浮かんでいた。
ナビエの母も微笑ましいという気持ちで今は彼を見ているようだった。さっきの怪訝な心情はもうない様子だった
ナビエは、『もしかするとハインリが父と似た性格だと思っているのかもしれないな。』と考えたのだった。
「ラリ。お父さんです。お父さんに会いたかった?私はあなたに会いたかったよ…」などとハインリはしばらくラリに話しかけていた。
これに嫉妬したのか、カイが不思議な声を出すと、ハインリはナビエの母にラリを渡して次はカイを抱きしめた。
するとカイはすぐに泣き、ハインリの髪をつかんで食べている。面白い光景だった。
「カイ、髪を食べないでください!」
*****
その光景をどれだけ見ていただろうか…。ナビエは暫くして母に「お母さま」と呼んだ。
「改まってどうしたの?」という母だったが、ハインリが双子にかかりきりになっているので、二人で話すことにした。
*
向かいにあるナビエの部屋に移動すると、母は再び怪訝な表情をした。
どうやら雪だるまを見た様子で(笑)「何か秘密にしていることがあるのか?」と聞いてきた。
母は、ナビエがハインリを避けて母をここに連れてきたと思った様子だったので「そうではありません。」と伝えた。
そして本題に入る。
ナビエは「お父さまのことを聞きました。前に二人が一緒にこちらに来ようとした際、父が後継者の問題で呼ばれたと言ったでしょう。」と告げた。
母親は「それがどうかしたの?」と何も知らない様子だ。むしろ、新年祭で何か悪い話を聞いたのかと不安がっている様子だった。
ナビエは、新年祭とは関係ない話だと前置きをした上で、続けた。
「お母さまの耳にもすぐに入ると思いますが、ソビエシュはお父さまを皇帝代理人にしたいそうです」
*
ソビエシュはナビエに送った返事で、提案を受け入れると書いていた。東大帝国と西大帝国が同時に連合から脱退しようという意見に同意したようだ。連合が両国を同時に狙っていると思うと、両国の脱退が連合と連合を支える国々への警鐘になるだろう、という意見だった。
ただ、今彼は自分が体調が思わしくなく対外的な活動をするのが難しいそうだ。そのせいで皇帝代理が必要な状態だと書いている。最終承認は彼自身だろうが、過程は代理人が代わりに処理する必要がある…と書いていた。
それも驚くべき話であったがだったが、あまり問題ではなかった。ナビエはソビエシュの記憶に問題があることを知っていし、まだその症状が改善していないなら治療と安定に集中した方が良いだろう。
問題は、父を皇帝代理人にしたい、そう書いている事だった。
*
ソビエシュが自分の代理人だと言う名前。『カウターリグリエル・トロビー。』まさに父だった。
母はリールテアン大公はどうしたのか、シェルはどうしたのか、と聞いたが、二人とも代理人になれる状態ではない。
それでも序列は父より上の人間がいたはず、そうナビエは思った。
皇帝の代理人は絶大な権力を持つので、通常は後継者や近い皇族が務める。
母は「父よりも序列が上の方は一人は高齢と聞いています。だからではないでしょうか?」と言った。
ナビエは残りの方は?と聞いたのだった。
*
続く。
また時間を空けてすいません。そして前回、なぜか翻訳が不完全で公開しておりました、、失礼しました。修正しました!
ハインリがラリ・カイのもとに戻れてよかったです!
そしてソビエシュ、とんでもない状態になっていますね?
なんでそんな提案をしてきたんでしょう。もう西大帝国と属国になっちゃうのでは。(ある意味、ナビエの側室計画だわ笑)
*
この続きの254話はこちらから
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