LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
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257話 嘘の告白
エルギ公爵は一旦固まったが、ハインリが何を意図しているのか理解した。
ソビエシュ皇帝が有しているという、治療魔法使い。その魔法使いを利用しようと言うのだ。彼女の治療能力は他の治癒系魔法使いよりもはるかに優れていると噂になっていた。
しかも、その魔法使いは宮殿直属だそうだ。そのような能力の高い魔法使いに巡り合うことも少ないが、宮殿直属だからこそ、今回のような話ができるのだろう。
その魔法使い自体が依頼を受け入れない場合はあるものの、能力の高いその魔法使いが集中して魔法を施せば、彼の母親も、国を抜け出すことができるかもしれない…。今は庭園すら歩くことのできない状態だが。
*
そこまで考えて、エルギ公爵は思考を止めた。苦々しく笑って手紙をくしゃくしゃと丸めた。
――ソビエシュ皇帝が自分を助けると?そんなわけがあるまい。貴重な治療魔法使いを自分に送ることがありあえるだろうか。普通の関係でさえ、そんなことをする可能性は考えにくい。ましてや、自分は港の問題でソビエシュ皇帝とトラブルまで起こした人物だ。
”ソビエシュ皇帝は絶対に自分を助けないだろう。”そう考えたのだった。
*****
ナビエは、東大帝国と西大帝国が連合を組む先について思案していた。更に、ホワイトモンドもそこに加入したいという旨を示している…。
ルイフト側の意向を聞いてみようと、ナビエはカフメン大公を呼んだ。
ルイフトがこの連合に参加すれば、他国とルイフトの交易にもうまく制約を設けられるだろう。今はなんとかナビエが制御しているのだが…。
少しこの話を切り出したところで、カフメン大公がいつもと様子が違うことに気づいた。今日は彼がちょっと落ち着きがない。さらに、会話をしていても上の空であることが一目瞭然だった。
「大公、大丈夫ですか?体調が悪いのでしたら、後日お話でも構いません。」
ナビエは彼の事が心配になってついに尋ねた。しかし大丈夫です、と返すだけの大公。しかし、さっきまでの大公の姿は普通ではなかった。
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更に気になることがあった。カフメン大公の近くをマスタースが通ると彼は彼女を目で追い、悲しい表情をした。それも1、2回ではなく何度もだ。彼は時々マスタースを見つめ、変な表情をしている。
いつもカフメン大公は、心の中で読んでしまうことを表に出さないよう、細心の注意を払って行動している。なのに今回はなぜこんなに表情に現れているのだろうか。マスタースとカフメン大公の間に何かあったのか…?ナビエは勘ぐって悩む。
*
しかも、いつも堂々とした立ち振る舞いのマスタースも、今日はなぜかおとなしかった。普段は誰かが何度も自分を見ていたら、掴みかかって窓の外に付きだすだろうが…。(もちろん、カフメン大公にそんなことをしたら国との問題になるので、実際はしないが、そういうレベルのことをするのが彼女だ。)
***
結局、カフメン大公が退出した後、ナビエはマスタースに彼と何かあったのかと事情を尋ねた。
すると彼女は神妙な面持ちで、否定し、大公に自分が何かしたのだろうか?と気に掛ける。
ナビエは、「あなたは目立つ行動をするのは間違いないけれども、思い当たる節がないのなら、大丈夫でしょう。」と答えたのだった。
(一言余計ですねww)
カフメン大公がなぜそんな顔をしていたのか、事情を知る人間はその後も現れなかった。
――西大帝国が月大陸連合から抜け出すのが気に入らないのだろうか。長期的に見れば、ルイフトにとっても良くない話なのかもしれない。ナビエはそのことも考えながら、色々思い悩んだのだった。
*****
一方のカフメン大公。ナビエが深刻な話をすることは分かっていたのに、話に集中することができなかった。
貿易に関する深刻な話をしていても、ナビエ皇后の顔を見ているとどうしてもコーシャル卿の顔が浮かんでしまう―――そう思っていた。
『コーシャル卿が幸せになるなら。コーシャル卿と私では釣り合わない。彼はシャレット姫と幸せになるんだ』マスタースという侍女聞こえるは心の声は苦しいものばかりだった。
しかも彼には時々現れるシャレット姫から聞こえる心の声も気になっていた。
シャレット姫は二人の関係をすでに推測済みだった。そのせいで、結婚生活は台無しになるのではないかと心配していた。
契約結婚をするからといえど、不幸な結婚生活を望む者はいない。
もちろん、コーシャルは結婚したら本当にシャレット姫を大切にするつもりであったが、シャレット姫はその想いは知ることはできない。
カフメン大公のように心が読めないから、不安を募らせる他なかった。
*
カフメン大公は人の心の移り変わりの早さをよく知っていた。例え、契約結婚した相手を愛すると決めていても、後で移り変わるかもしれない。それは本人さえ分からないこと。
ーーーこのもつれた関係をなんとかできるのは私だけなのだろうかーー?
カフメン大公は考えながら歩く。そして途中止まって、大きな木の下を眺めた。
そこは、彼が気持ちのやり場に困った時に度々座っていた木だった。
(ナビエへの恋愛感情ですね?w)
最近はシャレット姫がよくここに座って、変な妄想をしている。
そうして木の前で立ち止まっていると、背後にいた従者が心配して声をかける。
「大公。大丈夫ですか?今日の会議で何かお困りのことがありましたか。」
カフメン大公は表情を変えず否定した上で、こう指示をした。
「先日のあの黒ユリを、また購入しておくように。」
***
シャレット姫は好きな百科事典を抱きしめたまま、窓にもたれかかっていた。
するとガラス窓の冷たい空気が、額に伝わる。
ーーー冷たい。
そういえば、ナビエ皇后の魔法は氷の能力だったと聞いたことを思い出した。しかも、自分の父は「ナビエ皇后は後天的に魔法使いになったのだ」と聞いたと長々と手紙を送ってきたのだった。
それだけではない。父はシャレット姫とコーシャル卿の結婚により、ホワイトモンドが二大帝国連合に自然に参加できるであろう、と思い、大変喜んでいた。
*
姫にはそれらすべてが重荷だった。みんなが自分とコーシャル卿の結婚を喜んでいる。当事者2人を除いて。そんな悲しいことがあるだろうか。
その時、侍女がシャレット姫に声をかけてきて、カフメン大公の訪問を知らせた。しかも、大きな花束を持ってドアの前に立っているという。
侍女たちはシャロット姫のここ数日の憂鬱な表情はカフメン大公のせいだと勝手に妄想していたが、それが現実になってカフメン大公が突然大きな花束を持って現れた!と驚いて興奮した様子だった。
勿論、シャレット姫本人も驚いて躊躇し考えた。
『カフメン大公も私に片思いしているじゃない。私が彼の気持ちを受け入れたら、また辛い人を生むだけにならないだろうか』
しかし、お互いを切ない目で見つめ合っていたマスタースとコーシャル卿…。
自分は政略結婚を全うしようとしているだけにもかかわらず、結局マスタースとコーシャルの恋路を邪魔するような立場になっていることが居た堪れなかった。
*
姫がカフメン大公の入室を許可すると、すぐに彼は入ってきた。驚くほどシャレット姫好みの格好をしていた。
(心を読んだんですね?)
砂漠の国のエキゾチックな衣装。セクシーな髪形。濡れた切れ長の大きな瞳。広い肩。大きな手。--そして手には花束が握られている。
「今日はどうしたのですか?」
シャレットはさっきまでの憂鬱な感情を隠し笑いかけた。何より、いつも完璧に自分好みの格好をしてくるカフメン大公のことを不思議に思っていた。
「今日も花束を拾ってきたのですか?」
姫が花束を指して冗談を言うと、カフメン大公は一歩一歩と近づいて、姫の目の前で立ち止まった。
そして、花束を差し出してこう告げる。
「過去にも、今回も、拾ったことはありません。あなたが結婚する前に、私の心を伝えたかったのです。愛しています。シャレット姫」
カフメン大公は笑顔でそう告げた。
この告白にシャレット姫は相当驚き、びっくりしてのけぞった。すると近くのテーブルにぶつかり、置かれていた百科事典が床に落ち、大きな音を立てた。バタン!と。
姫はカフメン大公をじっと見つめたが、彼は目をそらさなかった。じっと、先だけ見つめるようなまっすぐな視線を投げかけている。
シャレット姫は彼のその眼差しにうっとりし、花束を受け取り抱きしめた。
「実は知っていました。」
姫は目の前のユリの濃い甘い香りを吸い込んだ。その甘い香りに酔って目を閉じた。
ーーこの甘くて魅惑的な香りがさっきまでの心配を一気に消してくれたーーー。
その姿をカフメン大公は暗い瞳で見つめながら、心から誓った。
『私が今あなたを愛していないということは、一生あなたには伝えません。これからはあなたがもっと幸せになるように努力するーー』
カフメン大公はシャレット姫が喜ぶ姿を見ると、罪悪感を感じていた。その感情から目をそむけるようにうつむいた。
ーー自分はこの感情と一生付き合っていかなくてはならない。シャレット姫をだます代価として。
*
カフメン大公はシャレット姫に更に聞いた。「姫も私のことが気になっているのではありませんか?」
カフメン大公がそうささやくと、姫は黒いユリを抱きしめたまま視線を上げ、二人の目が合う。
完全に自分だけを見つめる彼を見て、姫は心を決める。コーシャル卿は他の人を愛しているような男。自分はこの男と結婚する方が、みんなにとって、良い選択だ、と。
「カフメン大公、あなたは私をどのくらい愛しているのですか?あなたはナビエ様と親交が深く、二人で考案した経路の交易を主導して成功させたとか。私との関係が深くなれば、ナビエ皇后とは疎遠になるかもしれません。それでも大丈夫ですか?」
カフメン大公は答えは心に決めていた。
なので、即答する。「大丈夫です」と。
***
「カフメン大公と結婚する?!」
カフメン大公が戻った後。シャレット姫は自身の侍女たちを呼んで、その覚悟を告げた。侍女たちもびっくりして、お互いの顔を見合わせている。
しかし、まだ結婚をしたわけではなく、ましてや婚約式を正式にしたわけでもない。ナビエに迷惑が掛かる点と父の期待に応えられない点が悩みだ。
侍女たちは、父から毎日のように届く手紙に書いてあるような期待を裏切るのか…そう問い詰めてきた。
シャレット姫自身も、それでも結婚を破断にするのか、と机の上にある黒いユリを眺めながら、自問自答した。
そして、百科事典を抱きしめ考える。
「カフメン大公の告白があったとしても、仮にコーシャル卿に他に恋人がいなかったなら、このような決断をすることはありませんでした。私がこの破断をするのは、4人全員のためのもの。一人で背負うには重過ぎます。」
これを聞いた侍女たちは不安な眼差しでシャレット姫を見つめていた。
しかしすでに姫は自分の世界に入っていた。
姫は、自分が結婚を破断することをみんなが認めざるえない方法を探していた。
そんなことあるのだろうか。彼女自身まだ思いついていなかった…。
*****
連合を作るために午前中会議を重ねていたナビエ。一息つくために執務室に立ち寄った時だった。
「シャレット姫が結婚を破断したいと伝えてきた?」
副官は予想だにしなかったとを伝えてきた。ナビエはびっくりして副官に何度も本当かと尋ねたが、本当であった。
そもそも、婚姻を要望したのはシャレット姫の方ではなかっただろうか。それで兄も、マスタースと距離を置いて、シャレットと結婚しようとしたのだ。
副官の表情が暗くなるのを見ると、シャレット姫が拒絶した理由だけが原因ではないようだ。
「大丈夫ですので、教えてください」ナビエはそう伝える。
すると、「シャレット姫は、コーシャル卿が他の女性を愛していることを知っていました。他の女性を愛する男とは結婚したくないと。」と答えた。
なるほど、シャレット姫はマスタースと兄の間について知っていたのか…。ナビエは心から重いため息が出た。
副官はナビエにどうすればいいのかと尋ねるが、そもそもこの結婚には口を出していないので、ナビエも言うことがない。
しかし、夫が他の女性を愛するということがどんなに辛いことなのかは分かる。
シャレット姫に政略結婚のために我慢しろ、と告げることはできなかった。
そこで、破断したいなら早い方が良い、と告げたのだった。
*
続く。
色々問題が複雑ですね。
そもそも、カフメン大公がこんな決断を下すとは、読者として想定外でした。
人の心が読めるって羨ましい気もしていましたが、心底不幸な能力ですね。
彼の効かせた機転で、シャレット姫がコーシャルと結婚する以上に不幸にならないことを祈るばかりです。
(まあ、カフメン大公なら大丈夫だろう、と思いたいですが…秘密は墓まで持っていけよ?😡)
*
でも、コーシャルとマスタースの幸せな未来が待っている?のかもしれませんね。
まぁ、マスタースのことだから、二人の関係が姫にバレていたことをめちゃくちゃ気にしそうですが?w大丈夫かなぁ。
*
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