LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
過去の翻訳はこちらからどうぞ!
(2022.6.21)前話の253話に一部翻訳誤りがありましたので、訂正いたしました。
254話 平和
その頃の東大帝国。
宮殿にはトロビー公爵(ナビエの父)が来ていた。
自分以外にももっと代理権の上位となる人間がいるはずーーー。
なぜ自分が皇帝代理となるのか、そのわけを聞きに来たのだ。
ソビエシュが言うにはこうだ。
「1人は年をとりすぎている。2人は他の国の王族の貴族と結婚して他国に住んでいる。さらにもう1人は別の国に生まれそこで育ち、東大帝国の慣習さえ知らない」
ソビエシュは淡々と説明を続けたが、トロビー公爵は当惑した表情でそれを聞いた。
そして、自分の娘が西大帝国皇族と結婚したことを引き合いに断ろうとした。
しかしソビエシュはこう続けた。
「君が結婚したわけではないではない。あなたは私のそばに残ってくれていたし、東大帝国貴族として、いつも一貫した忠誠心を見せてくれた。私を貶める機会は何度もあったのに、だ」
ソビエシュは手を伸ばし引き出しから巻物を取り出して広げた。そこには文字がびっしりと書かれていた。
「私見で決定をしたわけではない。秘書たちと話し合い、君の持つ領地、領地民たちや家臣たちの評判、忠誠心。これまでの行為、全てを確認したうえでの依頼だ」
トロビー公爵から見えはしなかったが、公爵に関する良い情報がたくさん書かれていた。
*****
「家族の評判、能力、忠誠心、性質に及んであなた以外には適任者はいません。あなたとナビエ様の関係を心配する秘書たちでさえ、あなたが適任であることに同意しました。」
トロビー公爵は腕を組み、目を閉じた。
断るスタンスを続けてはいるが、彼自身も自分を選ぶことは正しい選択だと思った。ナビエとソビエシュの関係の問題もあるし、それを受け入れるのが面倒なのだ。
しかし、もしこの命令を拒否した場合、それはリールテアン大公の息子シェルのように相続権を永久に放棄する…ということを意味するのだろう。
ソビエシュは、一日横で見続けたら自分が対外的な活動ができない状態だと分かるよ、と伝え横で見ることになった。
***
皇帝は1日中トロビー公爵を横において過ごした。
トロビー公爵は間近で彼の状態を見たわけだが、確かに彼の言う通り対外的な活動ができない状態だった。
ずっと狂った状態ではなかった。業務はできるし業務能力にも特に問題はないように見えた。しかし皇帝の業務は執務室の中での仕事だけではない。
皇帝は外国の貴賓を相手にしたり、謁見で国民の声を聞いたり、国務会議に参加して顔を見せるなど、しなくてはならない。
むしろそのような業務の方が多かった。
皇帝は皇帝としての業務能力の以上に、対外的なイメージが重要だった。皇帝はまさに国を代表する存在であるためだった。
*
いずれにせよ、皇帝の精神状態が良くないという話はすぐに国内外に広がっていくだろう。
しかし、狂った姿を直接見せるということと、噂だけが分かるのには違いが大きかった。
*
それでもトロビー公爵はすぐに答えを下せなかった。
楽観的に考えると、簡単なことだった。
ソビエシュは若いし、彼の状況が好転すれば結婚をして子供を産むことができる。それから再び皇室が権限を取れるだろう。
トロビー公爵も元の職務に戻ればいいだけだ。
しかし、皇帝の状態が改善されない場合はだうなるのだろうか。
好転して結婚しても子供が生まれない場合は?
そうなれば、トロビー公爵側から次の皇帝が出るしかなくなるであろう。
ナビエはすでに西大帝国の皇后なので除外されるだろうし、コシャールはソビエシュに近い年齢だが、リールテアン大公に似た理由で除外されるだろうと思ったが…。
実際はどうなるのか。
ナビエ・コシャールの二人の子供のうちどちらかが、遠い未来ここの後継者になるかもしれないのだ。
その時、トロビー公爵は「ハッ」となりソビエシュを見つめた。
ラスタの言葉通り彼が不妊で子供を作ることができない場合を見込んで、自分を選んだのだとしたら…。
*****
その頃、ハインリとナビエと子供たち。
夜になるとハインリはカイ・ラリを寝室に連れて行き、鳥の姿に変えた。そして、巣の中に赤ちゃんの鳥を招きいれると、巣の中に入っていった。
そして赤ちゃんを抱きしめたまま毛毛づくろいをし、踊るように歌を歌った。本当に微笑ましい光景に目尻が下がるナビエだった。
*
しかし、今は話をしなくてはならない。
もし父が本当にソビエシュの代理人になるのなら、どうしたらいいか相談したい。
しかし赤ちゃんばかり相手をしているハインリ。カイがハインリの羽を掴んで引き抜こうとして、「カイ、お父さんの羽毛を引っ張らないで!禿げができますよ」と言ったりしていた。
ナビエは少し時間を置いて話をすることにした。
*
ハインリから存分に愛情を受け取った二人は毛並みも整い、お腹もいっぱいになったので満足して眠りについた。
ハインリは横からその姿を見て、巣から降りて来た。
ハインリは人に変わり、自然にナビエの背中に手を回し、首筋に口づけをした。そして、「クイーンは何を言おうとしましたか?」と聞く。
続いてナビエの口に軽くキスをした。しかしナビエは離れて、手で自分の顔を覆った。
*
「クイーン?泣いているのですか…?」
そんなはずはない…自分は泣いたりしない。そう思うナビエだったが、幸せな今が脳裏によみがえり涙を浮かべているのだった。
「クイーン」
さっと涙を拭くと、ハインリがナビエを胸に包みこんだ。
ナビエはしばらく彼の腕の中で心臓音を聞いていると、おちつくことができた。しかし、無理やり我慢しようとした涙が、再び目元ににじんだ。
連合本部を離れ、慣れた安全な場所ですごせる今が安心に繋がっていた。
そして”ハインリと離れたくないーーーー”思わずそんな気持ちが浮かんだ。
*
顔を上げると、ハインリが固い表情でナビエを見つめていた。
ナビエが指で彼の下唇を引っ張ると、彼はもっと力を入れてナビエを抱きしめた。
彼の胸の中にいると、変わる自分に戸惑い、不安もあった。でも今は安心することができるようになった。
ハインリと結婚する時に思った言葉が浮かんだ。ナビエは「ハインリが他の女性を愛するようになり、彼が側室を取っても痛みは感じないだろう」という言葉だ。
でも今はそんな事をするだけでも胸が痛い。
ハインリが、ある日突然心変わりして女の人を連れてきて、側室にすると言ったらどうなるのだろうか?私は……。
「クイーン?突然、なぜそんなに怖い表情になったのですか?」ハインリが驚いてナビエに声をかける。
ナビエは、「あらかじめ警告しておくことができますか?側室を取らないで欲しいのです。」と伝える。
するとハインリは「絶対に取らない。私の気持ちはあなたのものだから」と返したのだった。
「君が風を吸うと、ハインリ」奥さん。わかりました。私の目は君に遠かったんだ」
*
そしてナビエは伝える。
「あなたが私に与えてくれた魔法、ここに返します。ここに。」
声を低くして警告まで確実に飛ばすと、ハインリは乾いた針を飲み込んで誓った。
「決してそうではありません。」
*****
数日後。西大帝国にいるトロビー侯爵夫人(ナビエの母)のもとに父から手紙が届いた。
受け取った母は、読むなり微妙な表情をしていた。
ナビエはやはりと思っていた。ソビエシュが送った返事を通じて推測した話だが、父の口から聞くのには、もっと現実味があるはずですだ。
「皇帝代理ですもの!すごいですよ!」
しかし、ローラはこの状況をあまり深く捕えていないのか、感服してるようだった。
ジュベール伯爵夫人も話を聞いて驚き、ソファーに座ることができず落ち着かない様子だった。
「皇帝代理になれば、皇帝陛下がない時は皇帝陛下と同じ扱いを受けるのですか?しかも今東大帝国は皇后席が空いているから、公爵が皇后の役割を・・・?」などと言って、わあわあ言っていた。
*
他方、ローズは比較的落ち着いて母親に尋ねた。
「公爵夫人。それではすぐに東大帝国に戻らなければなりませんね?」
母は困惑した顔でゆりかごを見つめた。ゆりかごの中には双子が横になって天井のモービルを見ている。
「そうしなければならないでしょう。赤ちゃんをもっと見たいのですが。」
この場で無言なのはマスタースだけだった。兄との状況があれなので、うわの空なのかもしれない。しかし侍女たちの視線がマスタースに集まると、慌てて無理やり笑顔で叫んだ。
「公爵様が東大帝国の皇帝代理になれば、西大帝国と東大帝国は今より仲が良くなりますね」
それを聞いたローラはナビエを見て、そうなのですか?と尋ねる。
「それはそうだと思いますが、それだけではありません。実は…考えていたことがありますが、父が皇帝代理を務めてくれれば、仕事がより簡単になります。」
母はもう一度読もうと手紙を手にして、ナビエを見た。
「考えていたことは、何ですか?」
*****
翌日の西大帝国では、国務会議が開かれていた。
参加者は久しぶりに現れたハインリを見て安心しているようだった。
不在の間、ナビエと宰相がいくら大丈夫だと言っても不安があったのだろう。仕事があって不在と言う皇帝だが、どこにいるのか、何をしているのか、まったく知らされまない期間が長すぎたのだ。
皆がハインリの帰京に安堵したのもつかの間、『東大帝国でナビエの父が皇帝代理を務める』というニュースを宰相が伝えると、今にもびっくりしてひっくり返りそうだった。
しかし参加者はすぐに、トロビー公爵は西大帝国に友好的な人間だし問題無いだろう、と言う結論に至ったようだった。
*
続いて宰相が東大帝国と西大帝国が同時に連合を離脱することを決めた、という報告をした。参加者は先程よりも驚いていたが、拍手が沸き起こった。
ここ数週間、西大帝国の締め付けをしてきた連合に一泡吹かせることをみな歓迎していたが、反対の声も多少上がった。
「連合側は西大帝国に誤解があったのではないか」というものや、「東大帝国が寝返ったりしないか」というものだった。寝返ると言う点については、トロビー侯爵が皇帝代理を務める点でリスクは減る。しかし、いずれはソビエシュ皇帝に権限は戻るだろうし、彼の手の内は読み切れないことが、反対者の意見だった。
「離脱しないことも問題です。連合にすべての国が加入しているので、あえてそこから脱退すれば貿易の方に大きな打撃を与えることができるでしょう。今、他国は魔法使いの作り方に集中していますが…」そのような意見も出た。
*
そこで突然、「皇后はどのようなご意見ですか?」と質問が出た。
じっと様子を聞いていたナビエが口を開くと、あっという間に会議室が静かになった。
ハインリがいない間、国務会議を主導していたせいか、それとも新年祭の時、こちらを攻撃したエインジェルを一掃したと噂が出たせいか。ナビエに皆の視線が集中していた。
ナビエの脳裏には、ふとここに来た初日が浮かんだ。
今は騎士も宰相たちも真剣な顔でナビエを見ている。それは初日とは大きく変わっていた。元々お飾りの王妃として招かれたのだから。
そして、少し笑ってしまったナビエ。人々から送られてくる信頼の眼差しがナビエに勇気を与えた。ナビエがきちんと進んできたという自信にもなった。いるという勇気。
「皇后陛下?」
宰相が心配した声色でナビエを呼んだ。ハッとしたナビエ。
そしてうなずいた後、手を上げて虚空を指で掴み、手をくるくると回す。
見守っている人々は不思議そうな顔をする。ナビエが何をしたのか分からないという表情だった。
ナビエは説明する代わりに、指をずっと動かし続けた。虚空に向かって。
*
続く。
また随分間を開けました。
なんだか、ナビエが信頼されている姿、初日と違うのを思い出すと感慨深いですね。
ついにクライマックスと言う雰囲気。
*
そして、ナビエは、多分魔法を使おうとしていますね。何をしているのでしょうか?
*
この続きの255話はこちらから
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