LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
過去の翻訳はこちらからどうぞ!
256話 彼が手伝ってくれるのか?
「ラリ!」
ナビエはあちこちに歩き回ってラリを探した。
もしかしたらラリが床に落ちているかもしれないと思って、腰を屈めて草の間を見てたりした。
背丈の低い木にいるのではないかと思っていたが、見たところいないので、高い木も探すことにした。
木を蹴って、「ラリ!」と声をかけたりもした。
*
しかし、いくら遅れて行ってもラリの姿は見えず、ナビエは恐怖で目の前が暗くなった。
ラリ…今どうしているのだろう。もしどこか、怪我をしているなら…。
翼に傷を負った状態で大きな鷹が飛んできたら……?
「ラリ!!!」
ナビエは引き裂かれんばかりの声でラリを呼んで探した。
ふと、そこでハインリが作った巣のことを思い出した。
すごく高いところにあった巣だが、もしかしてそこまで飛んで行ったのだろうか。
ラリは、小さな赤ちゃんだが、ハインリは以前「私たち一族の赤ちゃんは高い場所が好きです、クイーン。勇敢な赤ちゃんであれば、高い位置の巣を好みます。」と言っていた。
もしかしたら…そこにいるかもしれないと思い、ナビエは急いでそこに走った。
*
「皇后陛下?」
その姿をマスタースが見つけて近づいてきた。
「今は来ないで!」と叫んで走り去った。
その姿を見たマスタースは驚いて固まっていたが、その横を通り過ぎ…。
今は状況を説明する余裕すらなかった。
マスタースに赤ちゃんが消えたという話をしたら、絶対一緒に探します!と言うだろうが。
今、ラリは人の姿ではないので、一緒に探す人を見つけることさえできない。
ナビエはラリの羽毛がいっぱいついた毛布を抱えて、走って巣に向かった。ラリの残り香が胸を締め付けた。
「ラリ、どうか無事でいて…。」
***
ナビエは、寝室を通り過ぎて庭へ行き、狭い道に向かった。
そして茂みを見ると、そこで一際高い木に、宝石で飾られた巣が見えた。
日の光を浴びてキラキラと輝くその巣の中には…ナビエの赤ちゃん、ラリがいた。
手のひらほどの大きさもないラリだが、その巣にどっしりと座っていた。
そして太陽をまっすぐ見ている。
ラリを見ると涙が思わず流れた。
涙があふれて見つめることができない状況のナビエ。
そこでラリが巣でぐらぐらし始めて…思わず巣から落ちそうになった。
「ラリ!!!!!!」
ナビエが声を上げると、ナビエを見下ろしたラリは小さな翼を広げ、巣の上へ飛び立った。まるで踊っているようだ。
涙と同時に、ナビエは笑みをこぼした。
どういう感情か分からなかったが、それはハインリが飛びたつ際にダンスような動き…そのダンスと同じだった。
それはハインリの最も嬉しい時の行動だった。
ラリは小柄な体でそのダンスをたくさん見せた。
ーー「私たちの一族は、普通の鳥よりも早く成長します。クイーンの想像より早く大きくなるので、心配しないでください。」
ナビエはそうハインリが言っていたことを思い出した。
*
次の瞬間、大きな黄金色の鳥が現れて、大きく上昇し、赤ちゃん鳥を口で咥えた。そう。クイーン(ハインリ)である。
彼は落ち着いた動作で、降りてきて、ナビエのすぐ前にやって来た。
ナビエが手のひらを突き出すと、クイーンは手のひらの上に赤ちゃんを下ろした。
そしてクイーンも、ナビエの手のひらに頬を寄せてゆっくりと翼を伸ばした。
***
ラリとハインリが人間に戻ると、ナビエは素早くラリに服を着せ、毛布で包んだ。ラリは目を開いて、いたずらに笑うような表情をした。
ナビエは、ハインリに「あなたに似ていたずらっ子なんです」と抗議した。
ハインリも反論することができなかった。
ナビエ自身もおてんばだったが、こんなに幼い頃から親を心配させるようなことはしなかった、とやんわり伝えるとハインリは苦笑いしたのだった。
騒動を起こしたのはラリだが、ラリ自身に伝えても仕方ないのでハインリ抗議するしかなかった。ラリがこういうことをするのは、ハインリの体の中に流れる一族のの血のせいなのだから…。
ハインリも「自分もここまでではなかった…」と目で訴えかけながら、そっと赤ちゃんを羽で包み込んだ。
ハインリの髪が頬に触れ、くすぐったかったのかくしゃみをしたラリ。ラリの小さな鼻から鼻水が出てきた。
ハインリは「クイーン」の姿でここへ来たので、人の姿に戻ることができないままだったので、しばしゆっくりした後、彼は「クイーン」の姿に変身して、執務室に先に帰った。
***
ナビエはラリを抱えて一人で部屋に戻ることにした。
ところが道中、マスタースがさっきナビエが通り過ぎたその場に立ちつくしていた。
その様子を見ると、さっきのことを思い出して詫びるナビエ。
すると、マスタースの目から涙が落ちる。ナビエが大丈夫かと心配する。
ナビエは自分がマスタースに冷たく接したからだと思い「さっきはラリがいなくなって話をする隙がありませんでした。」と詫びを伝えた。
するとマスタースは「さっき…?」と驚いた表情。
ナビエはそこで自分が原因ではないことに気づく。コーシャルと何かあったんだろうか?と勘づいた。それが喜んでいい話なのか分からず、とりあえず部屋でマスタースの話を聞くことにした。
***
部屋の中に入ると、今度はカイがわんわん泣いていた。
普段は落ち着いたカイだが、今はローラがガラガラを一生懸命振っても泣き止まなかった。。
ナビエがラリを連れて出ていったことで嫉妬したようで、声を上げてわんわん泣いていた。
「カイ、ごめんなさい…!」ナビエはラリをマスタースに渡して、カイを抱きしめた。
マスタースはラリを抱えてまた泣きだし、ぎゅっとラリを抱きしめた。
ナビエに抱かれたカイはナビエの髪を口に入れて食べようとしていた。
ナビエはカイをなだめて止めると、それでまた泣くカイ。
*
喧噪の中、「それで、どうしたの?マスタース嬢。」
ナビエは再びマスタースに声をかけた。
マスタースは変わらずラリを抱きしめていたが、もう涙は止まっていた。
しかし、まだ表情は暗い。
ナビエが「マスタース嬢?」と声をかけるも、彼女は堅く口を結んで、首を振った。
「いいえ。お酒を飲んで幻影を見たんです。」
ナビエはあなたから酒の匂いは全くしないのに?と聞いても、「そうだ」と答える。彼女はこれ以上答えたくない様子だったので、諦めて兄と話をすることにした。
兄と関連する話であることは間違いなさそうだ。
*
ローラが気を効かせて、マスタースの前に暖かいお茶を持ってきた。マスタースは涙を流しながらお茶をすすった。
ナビエはマスタースにどのように声をかけてよいか考えあぐねていると、マスタースの隣に座ったローラが口を開いた。
しかし彼女は思いもよらぬ話をする。
「皇后陛下。エルギ公爵は泣いていらっしゃいました。」
「公爵が?なぜ?」
エルギ公爵…。新年祭から帰ってきた時には、すでにブルーボヘアンに帰っていったと聞いた。
ハインリに会いに来ていたにもかかわらず、結局ハインリには会えずだった。
ローラによると、何やら公爵は帰郷する際、ただならぬ雰囲気で涙を流して去ったのだそうだ。
*****
エルギ公爵はブルーボヘアンへ帰郷した。
エルギ公爵が戻って家の中に入ると、執事がびっくりして慌ただしく走り回った。
「母の容態は?」と聞くと、執事はエルギ公爵が来るとは思っていなかった様子で、的を得ない返答ばかりした。
しびれを切らしたエルギ公爵が何回も同じ質問をすると、ようやく執事は難しい顔をしながら「今はお元気そうです」と返ってきた。
次の瞬間、階段の上から優しく装った声が聞こえてきた。
「いつもそうよ。状態が良くなったり悪くなったりじゃない。」
エルギー公爵が頭を上げると、そこには顔の半分に髪がかかった女性が立っていた。生暖かいまなざしで彼を見つめている。アレーシア…だった。
エルギ公爵は彼女を無視して、母のいる所へ向かった。
*
母は冬の風に耐えながら一人で庭に出ていた。人が誰もいないその孤独な庭園で、車椅子に座って虚空を見つめていた。
しかしエルギ公爵の足音を聞くとすぐに振り向き、笑顔を見せた。
エルギ公爵は母に近づいてよく見るが、以前と同じだった。容態が悪化したようにも見えない。
*
エルギ公爵は母に家の中に入るように促して、一緒に中に入った。
そして彼女をベッドに横たえ、温めた牛乳を入れたカップを渡す。母が牛乳を冷まして飲む間、エルギ公爵は彼女の足をマッサージした。
母親の弱弱しい姿を見ていると心が痛む公爵。数時間、牛乳を飲み終えて横になった母とゆっくり過ごした。
*
その後、彼は庭に置いて行った車椅子を片付けようと外に出た。すると、そこにはクロディア大公が立っていた。
エルギ公爵は父へ聞く。
「何をするつもりですか?病気の人の名を使って何をしようと言うのですか。あなたは人間として、正しい行動をしているおつもりですか?」
すると父は、自分が送ったものではない、アレーシアがしたのだ、と言う。
エルギ公爵はそれが彼女がしたことだとしても、父が止めなかったことが問題だとさらに抗議。
しかし父は、「一度や二度の話じゃないか。彼女はあなたの恩人なんだから。」と答える。
しかしエルギ公爵は「いえ、私の母の敵です。」と言い放った。
その答えに、クロディア大公は表情を歪め、息子の腕を掴んだ。しかしエルギ公爵もひるまないので、クロウディア大公は耐えきれずこう告げる。
「アレーシアが憎いなら、彼女に自分の肌をあげればいい。敵と言いながら、敵に命の借金をしたり自分のことは棚に上げて関係のない家柄をいじめている愚かな奴だよ、お前は。」 と言いながら冷笑し、その場を立ち去った。
エルギ公爵は悔しくて、涙を浮かべながら拳を握りしめ震えた。その姿を、後ろから母が見ていたが、彼は気づかなかった。
*
涙を溜めた目で母の元へ行くことができなかったエルギ公爵。一旦、壁に寄りかかって考える。
ーーふと数日前、彼は階段で自分の背中を押そうとした手を思い出した。彼は押されそうになった瞬間、2つのことを考えていた。
自分が死ねば、母を守る人はいない。少なくとも自分は、母より長く生きなければならないと思っていた。しかし一方で、いっそのこと、その手で押されることも望んでいた。
彼は、虚しく笑った。あの女性にとって、自分はアレーシアと父と同じ存在なのだろう。いや、もっと悪魔なのかもしれない。
*
エルギ公爵は母をこの地獄から連れ出したいと、幼い頃から何十回も考えていた。しかし、実際はこの国はどころか彼はこの都市さえきちんと抜け出すことができなかった。
体が弱い母は庭を散歩するのがやっとだった。脱出しようとすればするほど、彼はさらにぬかるみに入り込む気分であった。
*
ふと瞼の裏に銀髪の女性が浮かんだ。
――ラスタ。
彼女が皇后になる前に彼がしたアドバイスは正しいものだった。
しかし、彼女が皇后になった後、彼は正しいアドバイスはしなかった。
だが一度だけ、彼は真剣に悩んだことがあった。正しいアドバイスをするべきか、誤ったアドバイスをするべきか。結局は誤った方のアドバイスをしたのだが。
今考えるとその時にこの阿修羅の道を自ら選んだようなものだと思った。地獄で会ったら彼女は自分の髪を掴むだろう。
*
その時、頭上で鳥が鳴いた。エルギ公爵が見上げると、鳥は彼の前に降り、足を出した。
彼は足に付いていた紙を取ると、そこにはハインリが送った手紙があった。
「東大帝国と西大帝国が同時に連合を発足させることで合意した。ソビエシュ皇帝なら君を助けられるかもしれない。どの国を連合に入れるかはまだ議論中だが…。」
と書かれていた。
*
続く。
マスタース嬢、きっとナビエの顔がコーシャルに似すぎて思い出してしまったのですよね…。
ちょっと読んでいて笑いました。
*
そして、ブルーボヘアンのエルギ公爵一家の話。ここはよく話が見えないのですが、(私が読むのに時間を空けすぎているから?)
アレーシアと父親、母親の因縁については、後5話で解決するのかな?
ここは外伝で出てくるのでしょうか。どっちなのかよく分かりませんが…。
とりあえず、ラリが見つかって良かったですね。
取り乱すナビエさんには、最近読者としては慣れてきました。
*
続きます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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