LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
過去の翻訳はこちらからどうぞ!
200話 ソビエシュの絶望(1)
騎士は「ヴェルディ子爵夫人がグローリエムを連れて城を出た」とソビエシュに報告した。
ソビエシュはこっそり脱出を手伝うように指示。加えて、ヴェルディ子爵夫人について行き、エルギ公爵と待ち合わせをする頃、迎えの人になりすまし南王国へ誘導、そして国境付近でエリアモ伯爵を訪ねるように‥と言った。
騎士はその命を受けてすぐにソビエシュの元を離れた。
これでソビエシュの頭からグローリーエムのことが消えるはずだった。情が移ったとはいえ、彼女は他人の…むしろ大嫌いな二人の…子供であった。加えてソビエシュの恩情によって、この後は”姫”から”貴族の娘”として過ごすことになるのだ。奴隷になるはずだったのにも関わらず、だ。
そこまで考えても、ソビエシュの頭からグローリーエムのことは消えなかった。
ぼんやり寝室に戻って籠の中の青い鳥を見る。鳥はソビエシュを見て鳴いた。ソビエシュは自分の愚かさを痛感していた。
*
ソビエシュは暫くして西宮に行く。そこはもう誰もいない。
ラスタのために作られた美しい部屋は彼女が塔に入る前、南宮に行った時から空室だった。家具も全て片付けられガランとしていた。
そこはかつて、彼の母親がーーそしてナビエがーー使った部屋だった。ラスタが使った部屋であったが、ソビエシュはナビエがいた頃の事を思い出していた。空の部屋を見ると、ナビエが浮かんだ。
そしてソビエシュは、昔のナビエとその部屋で過ごした日々のことを思い返した。
なぜ彼女との思い出はこんなに多いのに、冷たくするだけになってしまったのだろうか。昔は週2回は一緒に食事をして、色々な会話を楽しんでいたのに…。ロマン小説の主人公のような甘い関係ではなかったが、良い戦友だった。
自分は一体何のために幼馴染であり、妻を捨てたのか。ソビエシュは過去の行動を悔いた。
そして床を拳で何度も叩いて、辛い現状に耐えられず泣いた。一度だけ、もう一度だけ自分を見て欲しい。しかし、先日彼女の実家を訪ねた際、彼女は振り返ってもくれなかった。そして隣にいるハインリ皇帝は自分の妻だという目つきで見て、手を握っていた。
ソビエシュはこの場で死んでしまいたいと思った。ここで自分が死んだら同情してくれるだろうか、と衝動的に考えて苦しんだ。
一体どこから間違っていたのか。目をつぶって考える。
ソビエシュは少なくとも自分とナビエが別れたことについて、ラスタを責めるつもりはなかった。子供が仮に自分との子供だったら、騙されていなかったら…状況は変わっただろう。
しかし根本的な問題は、宮殿でラスタを連れてきたことだ。
そして、他にもたくさんのラスタとナビエに関することを思い出した。
ソビエシュは「やめろ!」と首を振って、考えを停止した。後悔することが多すぎてとても耐えられなかったのだ。
仮にナビエと離婚していなければ、これらの過ちは修正できたかもしれない。しかし現状は違う。
ソビエシュは廊下に出て、護衛に酒を持ってこい!と命じた。
そして、護衛が持ってきたお酒をがぶ飲みする。ソビエシュの目にはぼんやりナビエの幻影が見え、眠気が来ていた‥。
と、手から酒杯が落ちて目が覚める。ソビエシュはその場に座り込んだ。
自分の手で全てを台無しにした、と改めて自覚したのだった。
窓の外は騒がしい。ロテシュ子爵とアレン・リムウェル、イスクア子爵夫妻の公開処刑の歓声が響いていた。
***
南宮で少しの間監禁されていたラスタは、翌日ホールで皇后廃位を処された。そこにはソビエシュは出席しなかった。
ラスタはもう立っているだけ、完全に心が壊れていた。両腕を騎士に抱えられて今後幽閉される塔を登った。
ラスタの腕を抱えている一人は、かつてナビエの近衛騎士だったアルティナ卿だった。彼はきっとラスタは塔での幽閉生活を長く耐えることができないと思っていた。
そしてラスタは塔に放り入れられる。
そこは、暗くて蠟燭さえも無い部屋。高い位置に小さな窓があり、そこが唯一光が差し込む場所だった。そして、錆びたベッド1台と小さなバスルームだけがある部屋だった。夜になると更に暗くなるだろう。
ここで一生を過ごすことに、ラスタは遅れて恐怖を感じた。
そして「開けて!開けて下さい!」と何度も叫んで、部屋の扉を叩いた。しかし誰も来ない。騎士たちは既に塔の階段を下りたようだった。
「きゃああああああ」
彼女は鴉のように何度も叫んだ。
そして、「陛下!助けて下さい!」ソビエシュのことも呼んだが当然彼は来ない。泣きながら扉に頭を叩きつけた。
誰も答えないし、誰も来なかった。
ベッドに丸まって座ると、笑いながら舌を出したデリスが浮かんだ。逃げるためにメイドを指した時のことも浮かんだ。羽を抜いた青い鳥の声が浮かんだ。そして一斉に自分を攻撃してくるように感じた。
「怖い!怖い!嫌い!嫌い!」叫びながら再度ドアに向かって走って助けを求めた。
その瞬間、食べ物を支給するための小さな扉が開いた。そして、小瓶が置かれていた。そこには丸い薬が入っていた。
慌てて扉を叩き、開けてと叫ぶ。しかし、勿論扉は開くことが無く、再び人は去った。
ラスタはぼんやりとその薬を見る。どう考えてもそれは毒薬だった。
ラスタは「どういう意味か!」と薬を投げつける。そんなもので死ぬ気はなかった。
…しかし、三日が経ち彼女はついに毒薬を拾った。
何もしていないと、彼女の脳裏にこれまで関わって傷つけてきた人たちの声が鳴り響く。加えてナビエの睨んだ目の幻影が付きまとい、もう耐えられない状態だった。
首が無いロテシュ子爵やイスクア子爵夫妻に足を引っ張られるような悪夢も数日間に渡って見続けた。昼は退屈しのぎに寝て、夜は眠れない日々を過ごした。
こんな日々を何十年も繰り返すことが耐えられないと思ってついに泣きながら毒薬を口に入れた。
「怖いです、陛下…なぜ助けに来てくれないのですか…」
そう呟きながら、床に倒れた。毒はすぐにラスタの身体を蝕み、全身の痙攣が止まらなくなった。
*
小さな窓からは月が見える。
死ぬ間際に、ふとラスタは自分が初めて抱いた赤ちゃんを思い浮かべる。そして、ソビエシュのことも思い浮かべた。
口から血が出る。ソビエシュのことは憎んだが、自分に最大の幸せをくれた男でもあった。そして、脳裏に自分が傷つけてきた人達が出てきた。皆に申し訳ないと泣くと、大丈夫だと答える。最後にナビエが現れる。彼女は自分が望む全てを持っていたルベティの憧れの人だった。
「ラスタです」と泣きながら何度もナビエに言うと、ラスタに少し笑ったように見えた。
そしてナビエは「変な子」と言いながら、ルベティにしたように優しくラスタを包んだのだった。その懐は冷たかった…。
*
こうしてラスタは完全にこと切れた。
窓から入ってきた風が彼女の銀髪を揺らす。
彼女の死体が見つかったのは、その日から一週間が経った日の事だった。
*
続く。
祝、200話の回で…。ラスタの最期の話でした。
ラスタがしてきたことは許されないけど、あまりにも悲しい最期。
こうやって読むと、ラスタはナビエに愛されたかったようにも受け止められますね。
みんなが許してくれるなんて、そんな甘い事は無いからな!きっと地獄におちますけどね…
*
この続きの201話はこちらから
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