LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
過去の翻訳はこちらからどうぞ!
244話 一つ失って一つを得る
東大帝国では、ソビエシュの奇行について多くの宮廷人たちが噂話をしていた。
横にいないのに突然誰が立っているかのように呟いたりするそうだ。みな口々に怖いと言い、ラスタの呪いではないか…と会話した。

「ゴホン!」
噂話をする宮廷人の横で、皇帝の秘書が大きな咳ばらいをした。
「噂話には注意してください。無駄な私語は厳禁ですよ。」
宮廷人たちは注意を聞いて深く頭を下げた。例え皇帝の気が狂った様子であっても、確かにそれは口に出すことを気を付けなければならない話だ。例え、事実であっても。
「行け」
秘書が指示すると、宮廷人たちはそれぞれの持ち場に戻った。
*
一人残った秘書は、去る宮廷人たちの後姿を見つめ、秘書陣が集まって会議をする場所へ向かった。そこにはすでにカルル侯爵がいて、眉間にしわを寄せていた。
最近のソビエシュを見て、彼を増々奇妙に思う人が増えていることに関して、皆で悩んでいた。
二重人格になった時のソビエシュは、自分の状態をそれぞれのソビエシュ自身が把握していたので、行動に気を配っていた。なので、宮廷人に問題視されることも無かった。
しかし、数日前に倒れたソビエシュ。次に目が覚めた時は記憶が戻った状態だった。これに、秘書たちは皇帝が回復したと思い安堵した。
実際は、別の問題が起こった。ソビエシュ皇帝は仕事に励むが途中で突然空を見て、誰かに話すように独り言を言うようになった。その行動を見た人は不気味に感じた。
以前は、本人も秘書たちが必死になって、皇帝が記憶を失い、かつ二重人格になったという事実を隠すことができたが、今はそれも難しい。いつ彼が奇行をするか分からないからだ。
だからといって、完全に狂った状態でもなく、業務にも大きな支障はなかった。しかしこの状態では対外的な業務はできないし、通常業務ができる状態もどれだけ持続できるのか不明だった。
正気でない状態で内密な報告書にサインでもしてしまう可能性はないだろうか。仕事も問題が生じる余地が残っていた。
*
最も重要な問題は、皇帝の重要業務の一つ、外交ができない点だった。他国の貴賓などを接待することは、皇帝しかできない業務だ。
カルル侯爵を始めとする秘書たちは、重要な業務はソビエシュにゆだねるとして、対外的な業務を代わりに担当してくれる人が確実に必要だと考えていた。
そして、ソビエシュが少しでも静養できる状況を作ろうと考えていた。

***
ソビエシュは絵を描こうと筆を握った手をゆっくり動かした。

しかし結局筆を下ろして目を閉じた。天井に見て深呼吸をする。
描きたい顔ははっきりとあるが、それを絵で表現しようとすると、笑顔、泣き顔など様々な表情が浮かんで、何も描けなくなったのだった。
彼が描きたかったのはナビエ。記憶にあるのは、彼女の赤と金の色のイメージだった。
*
ナビエが嫌いなのはラスタとその二番目の子供であった。最初の子供(アン)とは関わりがなかったはずだが、敢えて探し出して欲しいと要求をしてきたことは理解できなかった。
ソビエシュはいつの間にか、彼女は理解できないほど遠くにいったのだと思い、心が痛くなった。
ナビエを取り戻す計画を立てていた時は、自分は世界の誰よりも彼女をよく知っていると確信していた。
*
手が止まっていたソビエシュは再び絵に向かう。
人は都合のいいように物事を考えるものだ。彼自身はナビエをよく理解していると思っていたが、そうではなかったということだろうか。
そして自分は、ラスタの起こした事件について、事務的に冷たく対処したつもりであったが、罪悪感がある…ということなのだろうか。
面白い話だ。正気の時のソビエシュは自分がラスタに罪悪感があるか全く意識していなかった。なのに、お酒を飲むと酔って意識が朦朧として夢と現実の区別がつかなくなる。そんな時に突然の罪悪感が彼を襲うのだ。
「ラスタが可哀想ではないか」ナビエにそう告げた自分の声が脳裏に反芻される。
理性を維持しやすいのはむしろ今のような周りに誰もいない時だった。今起こることは全部幻想と思って対処することができる。
ソビエシュは召使いに絵を片付ける様に指示して、突然仕事部屋の机に向かい書類を取り出して広げた。
何も考えずに頭を空にして仕事にとりかかったのだった。
*****
その頃の西大帝国。
ナビエは”皇后陛下の側室になりたいです”という北王国大使館からの奇妙な相談を受けていた。これには傍らで侍女たちも驚きを隠せなかった。
ナビエは丁重に自分は側室を置く気がないということを伝えた。それより突然なぜそんな要求をするのかが気になった。
ハインリが行方不明になったという事実は極秘だった。ハインリの側近の中でも最側近の数人だけが知っている秘密事項だ。
ナビエの副官もこの話は知らないし、侍女たちも知らない。なので最近は侍女たちから、”ナビエが出産してすぐ仕事でずっと帰ってこないハインリ”についての不満が漏れ聞こえた。
ナビエはこういう時はとても苦しい気持ちになるのだった。
最近は、カフメン大公のルイフト貿易品の件があって以来、他国の大使が貿易の話を頻繫にしに来ている。なのでナビエは、北王国の大使もその話をするとてっきり思っていたのだ。
*
因みに、ルイフトとの貿易の話をしたい国々には必ず同じように返していた。「”最近の国外の情勢が安定しない”ので、安定するまでは貿易を行う予定はありません」と。
各国の大使たちは、連合側の手紙の内容を知ってそのような対応をするのかと勘ぐっていた。サモニュー大使は、その話をブルーボヘアン大使にダイレクトに伝えた。
それを聞いたブルーボヘアン大使は、エルギ公爵を思い出した。彼はハインリ皇帝と親密な関係だった。その手紙について知っていたら、ハインリ皇帝に伝えたはずだと考えた。
手紙の内容を知っていることは勿論他大使には伝えないだろうが、西大帝国側(ナビエ)が連合側から来た手紙の存在を知っていると考えた方が正しいと考えた。
加えて、ルイフトの代表であるカフメン大公は、無条件に西大帝国を通じてのみ月大陸の諸国と貿易をすると宣言している。しかも、ルイフト側の大陸は、ルイフト以外の国は国交が開かれていない。月大陸の各国は、どうしても西大帝国の仲介が必要だった。
”最近の国外の情勢が安定しない”。このように各国大使に述べたナビエの意図は、すぐに他の大使にも推測された。きっと月大陸連合側で西大帝国を敵に回そうとしていることについてそのように述べているのだろうと皆考え始めた。
つまり、連合の意図どおりに西大帝国に対抗する勢力を作れば、貿易も行えないという意味だ。
大使たちはどのように対処するか考えこんだ。これは大使たちだけでは考えることができない問題だったので、各国がそれぞれの王に意見を聞くことにしたのだった。
*****
その頃、シャレット姫は本を膝の上に広げて考えた。

王族に生まれた以上は政略結婚は仕方がないこと。それは覚悟をしていた。
元々はコーシャルのことを、”政略結婚なのに、あんなにハンサムな夫を選べるなんて運がいい方だ”と思ってたのに、なぜ今はため息をついてしまうのか。
大公のことを知らなければよかった。そして、大公が自分のことを好きなことをを知らなければよかった。それなら、今の状況に満足していただろうに。
(カフメン大公がシャレット姫を好きと言うのは思い込みですが)
*
シャレット姫がぼんやりカフメン大公のことを考えていると、ちょうどカフメン大公の国ではよくある露出の多い服を着た彼が現れた。
*****
「かわいいなあ。」
ナビエはゆりかごに横たわった赤ちゃんを見ていた。自分の子供でなくても、誰が見ても綺麗な赤ちゃんだと思った。

赤ちゃんを見ている時間はすべてが平和だった。
赤ちゃんたちの最大の悩みは夜暖かく巣で包んでくれたお父さん鳥が今いないということだろう。
*
眠っていた赤ちゃんを見ていると、色々なことに気づかされるナビエ。
生まれたての赤ちゃん見た時は、ハインリに似ているなあ、不思議な気持ちだ…としか表現できなかった。しかし、今、確実にあるのは子供たちのために平和な世の中を保ちたいという気持ちだった。
そのためにはどうすればいいのか。
連合を崩すためのエサは各国に投げた。月大陸連合と手を組むとどうなるかというエサだった。
少なくとも彼らが連合と結託するかどうかの答えを出すまでの時間稼ぎにはなるだろう。月大陸連合は思い通りに簡単に答えが出ないならどうするだろう。もし彼らがハインリを捕らえているなら…。
ナビエは、次に重要な要素はソビエシュだと思った。ルイフトとの貿易が出来ないことは、東大帝国にとっては大きな問題ではないだろうから。果たして東大帝国はどちら側に付くだろうか。
*
ナビエが悩んでいると、副官が慌ててやってきた。多国籍騎士団第四騎士団団長・エインジェルが訪問してきたという。
もしや、ハインリに仕事で用があって、来たのか?
それとも、他の国を揺すったことがすでに効果が現れたのだろうか。いや、そんなニュースはまだ聞いていないだろう。
とりあえず接見室で会うことにした。
副官にそう命じて、眠っていた赤ちゃんの頬に1回ずつキスをして、接見室に向かおうとした。
しかしふと思いついたことがあり、ランドレ子爵に「東大帝国の大使に、夜の部屋のどこでも良いので隠れるように伝えて欲しい、できるだけ早く」と命じた。
その後、ナビエは接見室へ行かず部屋へ戻った。そして、目を覚ましたばかりのラリを抱きしめたのだった。
*
続く。
ナビエは、何か企んでいるようですね。
それにしても各国とルイフトとの交易をネタにして、揺さぶるのはみごとな手腕です!
さて、エインジェルがやってきた目的は何でしょうか…?
*
この続きの245話はこちらから

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
押してくれると喜びますー!

にほんブログ村