LINEマンガで連載中の『再婚承認を要求します』の原作、韓国小説の翻訳ネタバレを記載。
端折ってまとめて書いているので、全体的に伏線漏れあり。ご了承ください。
過去の翻訳はこちらからどうぞ!
242話 たくさんの記憶
翌日になってもまだハインリの消息は掴めなかった。
代わりに、予想外の話を聞くことになった。国政会議の時に出席してもよいかシャレット姫が聞いてきたのだ。数日前、コーシャル卿と正式に婚約したので、国婚を公式に認めて欲しいという内容だった。
昨日は連合が西大帝国を狙っているという話が出て側近たちは皆不安になっていたため、シャレット姫の言葉で多くの側近たちが喜んでいる様子だった。
しかし、ナビエは純粋に喜ぶことができなかった。数日前に自分の目で見た光景…兄とマスタースが、お互いの気持ちを確認するシーンを見たからだ。
なぜ突然状況がこんなに変わったのか?兄がシャレット姫へ求婚しているなら、マスタースとはどうなったのか。
しかもシャレット姫自身も以前とは表情が違い、堂々とした雰囲気がある。笑顔はあるが、時折影があるような笑顔だった。
しかし、シャレット姫に”誤解があるからもう一度考えてみてください”と返すこともできなかった。
*
ナビエの脳裏には、兄が「西大帝国が不利な状況にあるのか」と聞いたシーンが浮かぶ。その後別れ話をしたのか…。そう推測した。
自分の場合は政略結婚だったが幼い頃からソビエシュとは友達だったし、ハインリとは自分が決めて結婚した。
しかし、兄は状況が違う。好きな女性がいて、相手も自分が好きだが、国のために自分の気持ちより政略結婚を選んだのだ。
ナビエは、”これは、兄、マスタース、そしてシャレット姫にとっても不幸を招く結果になるのではないか”と思い、気持ちが晴れなかった。
*
結局、ナビエは会議を終えた後もずっとこの話が頭をぐるぐるしていた。ハインリの事もあり、追い詰められた気持ちになり、今にも泣きそうな心情だった。
気晴しに散歩すると、今日も遠くにカフメン対空が見え、彼と目が合った。
彼とはここで頻繁に遭遇するが、前回はカフメン大公が挨拶をしてきた。今日は流石に気になることは無いかな…と思っていると、予想に反して彼は走って近づいてきた。
シャレット姫と兄のことが気になったのか?と驚くナビエ。
しかし不思議とカフメン大公は兄の話はしなかった。兄の事は当事者ではないし行く末が困っているのでちょっとほっとするナビエ。
一方で彼はその話題には触れず、「そろそろ国に戻る必要があるのです」と話し出した。何か、国に帰って確認する必要がある取引があるのだと言う。
…話が終わるとカフメン大公は言葉を噤んだが、まだ何か言いたそうな様子だ。
ナビエが、何か他に用件があるのか?と聞くが、言えない様子で軽く挨拶をしてすぐにその場を去っていった。
***
カフメン大公の後ろ姿を見つめ終わると、ナビエはまた散歩を再開した。
…数日が経ってもハインリに関する情報は入ってこなかった。
ハインリの代わりになる存在が必要だと思っていた。赤ちゃんたちも、鳥の姿に変わった時は父親の存在を探している様子である。最近は巣の中でお互いを必ず抱きしめて鳴いている。
勿論、ナビエ自身もハインリが恋しいかった。彼の手が、彼の腕が、彼の瞳が、彼の髪が、優しい声が懐かしかった。
愛する人が危険にさらされる恐怖、生死が分からないという恐怖は生まれて初めて経験する心情だった。
ナビエにとって、これまでの人生で経験した一番の恐怖は、皇后の地位を奪われた時だった。生涯皇后として生きる覚悟で生きてきたので、奪われた皇后席ではなく自分の人生そのものだった。
しかし、当時はハインリが一緒にいた。恐怖に直面した自分を、ハインリは両腕で抱きしめ安心させてくれた。
そのハインリが今はいない。現状の恐怖は以前より恐ろしいものであった。
両親には詳しい事情を言えない。ハインリの部下たちは状況を知るが故に、不安にさせてはいけない。自分が先導しなくてはならないから、自分の不安を告白できるわけもない。
だから、今は自分自身で平静を保つしかないのだ…とナビエは思った。
国民の安全や平和‥‥皇后のナビエにとっては全てが重要なことだ。そして、どうすればハインリを救うことができるのか。これも重要なことだ。勿論、ハインリがいない今、様々な外交問題に対処することも、とても重要なことだ。
やることが盛りだくさんの今。ナビエがしっかりするしかないのだった。
*****
その頃の東大帝国。昼のソビエシュは皇后候補者のリストを読んでいた。一定の基準の中でリストアップした皇后候補。結果、みんな似たり寄ったりの人間に見えた。
隣にいるカルル侯爵はソビエシュの反応を見守るも、ソビエシュは半分ほど見たところで、名簿を投げ捨てた。
「新しい皇后を迎えなければなりません。もっと真剣に見て下さい。」隣にいるカルル侯爵は真剣に探すように促すが、昼の人格のソビエシュには響かなかった。
最近では、カルル侯爵が何を言っても聞いていない様子だった。ルベティへの対応あたりからずっとこのような調子だ。
シャルルが皇位継承権を放棄したので、カルル侯爵が急いで皇后候補をリストアップしたのだが、この調子では元も子も無い。
「辛いと思いますが、ナビエ様は戻って来ません。国のためを考えて結婚してください。」
カルル侯爵は説得しても効果はないだろうと思いつつ諭した。それでもソビエシュの反応ははかったので、結局リストを持って部屋から出ていった。
*
ソビエシュは頭を抱えて、窓を見た。
窓には赤い服を着た子どもが見えた。彼女はこちらを見ている。
アンに会って依頼、1人でいる時はいつも表れる現象だった。最初は驚いたが、子どもは窓からこちらを除く以外何もしないと分かると、もう驚かなくなった。
それだけ精神的な問題があるからだろうかと思い、夜の自分に手紙で聞くと、夜の自分からは”そんな子どもを見たことは無い”という答えが返ってきた。
なぜ夜の自分ではなく、記憶を失った自分にだけ見えるのか?不思議なことだった。
*
ソビエシュはいつものように子どもを無視しようとしたが、起きて窓に近づいてみることに。
そうすればすぐ去る(消える)と思ったが、子どもは逃げなかった。ずっと窓の向こうからソビエシュを見つめ続けている。そして、何か子どもが話しかけていることに気づいた。
読唇を試みると「本当に、みんな私のせいだと思いますか?」と言っていることが、読み取れた。
ソビエシュはそれが何を意味しているのか分からなかったが、子どもの目から今度は血のように赤い涙が1滴流れてた。
そして子どもはこう続けた。「本当にみんな私のせいだと思いますか?」
子どもの赤い涙は1滴、2滴‥とどんどん増えて、無限に流れ出てきた。
ソビエシュは気味が悪いと恐怖を感じるとともに、ズキンズキン…と頭痛を感じた。
*
すると今度は遠くから自分の声が聞こえてきた。「皇后は、同情心がないのか?」
続いて自分よりもさらに後ろから、「生かしてください!」と言う薄暗い声が聞こえる。
*
今度はシーンが草むらに変わる。そこでは倒れて、泣き叫ぶ女いた。彼女は両方の手足を酷く怪我しているようだ。
再び薄暗い声が聞こえる。
「それは私たちのせいではありません。」
この言葉は彼の記憶の彼方から現れた声だった。
*
ソビエシュは一歩後ろに下がるが、窓から見える子どもは泣き続けていた。
「陛下は救世主です。」
彼は耳を止めた。声はぼやけていたが、奇妙で聞きたくなかった。
*
机の中に積まれて行く何かが見える…
「保管しておけ。」
また自分の声が聞こえた。
*
再びソビエシュは後退した。
その時、さっきとは全く違う、冷たい声—ナビエの声—が聞こえてきた。
「陛下はラスタさんに同情心だけをお持ちなのですか?」
「ラスタ?」初めて明確に名前が出た。
ソビエシュは頭を包んでいた手を放して、頭を上げた。
*
その瞬間、窓から見えていた子どもが長い銀髪の女性に変わった。口元と髪の毛には血がべったりとついていた。
この人がラスタなのか、そう思った瞬間、銀髪の女性は窓から消えた。
驚いたソビエシュは窓際に走って外を見下ろしたが、もうその姿は見えなかった。
代わりに後ろからナビエが冷たく囁く声が聞こえる。
「あれだけ可哀相だと言っていたのに、陛下の手で殺されたのですね。」と。
*
この瞬間、再びソビエシュに酷い頭痛が訪れ、彼は頭を包み込んで「カルル!カルル!」と叫んだ。
カルル侯爵はすぐに到着し、「陛下、陛下」と呼んだ。
しかし、ソビエシュにはこれが幻聴なのか本当のカルルの声なのか分からない様子で、「違う、ナビエ。そうじゃない!同情心じゃない。可哀相だろう?」などと呟いて、後づ去りしついに倒れた。
カルル侯爵は慌ててソビエシュを抱き抱えてついには泣き出したのだった。
アルティナ卿はその姿をドア越しに冷ややかな目で見ていた―――。
*****
その頃の西大帝国。
ナビエは、連合から送られてきた新年祭の招待状の返信について、どうすべきか悩んでいた。
月大陸連合は西大帝国を狙っているので、どう反応するのかが難しいところだ。この招待状は罠かもしれない。でも、無条件に無視することもできない。
側近たちはハインリが秘密裏に対応するため席を空けていると認識しているが、返事が遅いと誰かしらに疑われる事態になるかもしれない。
…ハインリは王子時代からよく抜け出ていたが、そんなに不思議に思う人もいないかもしれないが。
とにかく、早く返信をしなくては…とナビエは思っていた。
*
会議で側近たちは、
・危険を冒してでも人を送ってはどうか。
・東大帝国の魔法使いの助けを借りてはどうか?
などと提案をしてきたが、それも悩ましい話だった。
魔法使いに関しては要請することはできるが、むやみに東大帝国の助けを借りるのは避けたい話だった。
ダム建設の際、最短時間内に臨時ダムを作るべく東大帝国の助けを借りたが、当時はソビエシュがこちらで療養をしたいという交換条件があったが、今回はそのようなこともない。
一方的に借りを作るようなことは慎重に考えなくてはならなかった。
東大帝国の出方も分からない。ソビエシュの現状の問題もあるので、月大陸連合と手を組むかもしれない。
*
また、ナビエは側近たちに「ハインリ陛下のことはこちらで探すのではなく、連合側がハインリを連れて来るようにしなくてはなりません」と言ったのだった。
*
続く。
コーシャルとシャレット姫は本当にこのまま結婚してしまうのでしょうか?
ナビエが月大陸連合の問題をうまく解決できたら、別の道が見えるのかなあ…。
*
そして、ソビエシュは過去の記憶のフラッシュバックが酷く、ついにまた倒れてしまいました。
今回はドキッとしました。”陛下の手で殺されたのですね。”と言う、ナビエの幻聴。
ラスタに薬を渡したのは、ソビエシュ(か、もしくは使者?)だったのか…。(という推測ですが)
ラスタがここまで追い詰められたのはソビエシュが確実に一因を作っているのに、どこか自分とは線を引いて、自分に問題があると認めていない部分があって、読者としてそれが引っかかってました。
ソビエシュって自分の問題を見つめられない、弱い人間なんですね。きっと。
泣いているカルル侯爵が本当に可哀相だと思ってしまったw
*
さて!ハインリはうまく見つけられるのでしょうか?
*
この続きの243話はこちらから
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